「ほっとするね」~徳島県産材の話~

「ほっとするね」~徳島県産材の話~

徳島県産の材木を使った木の家は一言で言うと「落ち着ける家」です。人間の感覚に訴えるこの居心地のよさの正体は一体どういうものなのかを探ってみました。

香りの鎮静作用

03imgスギから匂うほのかな香り。木材中の微量な芳香成分に鎮静効果があることがいろいろな実験で確かめられています。木のこのような成分は製油と呼ばれ、鎮静効果の他に消臭作用、防ダニ作用、殺虫作用、防カビ・抗菌作用が知られています。

また、スギの香りが眠りを促進することが、最近の研究からわかりました。脳波などを測定すると、スギの香りのする部屋の方が眠りに入るのが早くなるという結果に。スギの香りが交感神経を抑制してリラックスした状態をつくり、睡眠を促進するのではないかと考えられます。

優しくあたたかい色

木材は紫から青色の光線を良く吸収し、赤から黄色の光を良く反射します。このため橙色を中心とした暖色が基調となって、温かいイメージを与えています。

また木材は、目に有害とされる紫外線の反射が少なく、目に優しい材料といわれています。

更に木材の木目や模様にある適度な揺らぎとコントラストの不規則性が、自然で快い印象を与えるのです。

家族の健康

04img住宅内の温度と湿度は、住む人の体感に大きく影響します。調温作用と調湿作用がある木材が、住宅の内装や家具として豊富に使われていると、室内の温・湿度変動は外周と比べて小さくなり、気候調節が行われることがわかっています。

また、住宅内の温度と湿度は、ダニやカビなど微生物の繁殖や住む人の健康に深く係わっています。住宅内において、相対湿度が常に高かったり、低かったり、あるいは著しく変動することは、人に対して望ましくありません。

実験室の壁にスギとビニールクロスを貼って、室内の湿度変化を比べると、スギではその変動幅が小さく、湿度が一定に保たれました。湿度が高くなれば水分を吸収し、湿度が低くなれば水分を放出するという、木の湿度コントロール機能が、快適な環境を作り出してくれるのです。

守られている感覚

種類の違う木造住宅の壁ボードの一方から熱を与え、反対側の熱の伝わり方をはかる実験で、スチレンボードとグラスウールは比較的早く裏面の温度が上がったのに対し、スギ板ではほとんど上がりませんでした。同じスギ板でも厚さの厚い物ほど温度変化が小さくなります。木材の小さい熱伝導率と適度な熱容量(熱の蓄積容量)により外部の温度変化を伝えにくい効果があることがわかりました。

外気から守ってくれていると思うと、何だかうれしくなりますね。

優れた強度

2003年11月、海部町で大規模な倒壊実験が行われました。この地域でよくみられる民家です。棟札には1935年築と記されていました。つまり1946年の南海大地震や1961年の第二室戸台風に耐えたことになります。

この民家の構造材などには杉が用いられ、風雨を避ける工夫が至るところにみられました。風の吹き上げや雨の侵入を防ぐために甍建てと呼ばれる工法が採用され、小屋組は、一本ものの丸太を格子状に二重三重に組み、頑丈に造っていました。

4日間にわたる実験から、民家が粘り強さを持っていること、土壁が建物の強度にかなり貢献していること、小屋組の強固な造りが建物のねじれを抑えていることなどが分かりました。こうした伝統建築の粘り強さは最近、限界耐力計算という設計法できちんと評価できるようになってきています。

また、この民家は70年近くたっても大きな損傷はみられず、腐りやシロアリ被害もほとんどありませんでした。用いられた杉材はおそらく近くの山から切り出したものです。杉を知り尽くした大工が丁寧に材を刻み、地元の竹と土で壁を塗ったこの民家の耐久性は、現代住宅をしのいでいます。倒壊実験で天寿を全うした民家が家づくりの基本を語りかけてくれるようです。

生長の証

07img樹皮と木部の間には、形成層と呼ばれる薄い組織があります。この層が木部や樹皮の細胞を生産し続けています。樹皮は雨風にさらされはがれ落ちたりするのであまり厚くなりませんが、木部は年々放射状に、つまり外側に外側に太くなります。

細胞の生長の仕方は季節によって異なり、日本では四季が規則正しく繰り返されるので年輪ができます。この輪の数を数えると樹齢が推定できます。ただし、季節の変化が少ない熱帯の樹木(ラワンなど)には年輪ができません。
年輪の幅はゆっくり育つと狭く、早く育つと広くなります。一般に、若いときは木も活発に生長するため幅が広く、年をとると狭くなります。同じ年にできた年輪でも、生長が活発な上のほうは広くなります。

また、春になると活発に生長し、秋には活動を休止します。春に形成される部分が早材(春材)、夏から秋にかけて形成される部分が晩材(夏材、秋材)です。木の年輪や木目は、この両者の繰り返しで構成されます。
早材は色が薄く、晩材は色が濃く見えます。両者は性質も異なり、早材は軽く柔らかく、晩材は重く硬いのです。晩材率が高い木ほど、つまり年輪の目幅が狭いほど、強度があることになります。塗装の際には、早材部分に塗料や着色剤がしみ込みやすいので、ムラ防止の方法をとる必要があります。

シロアリにも強い

伐採された丸太の切り口を観察すると、赤みと呼ばれる「心材」と、その周りの白太と呼ばれる「辺材」に分かれています。辺材は根からの水を運んだり、でんぷんなどを貯蔵するなど一部生活機能を持っていますが、心材ではすべての細胞は死んでいます。

「徳島すぎ」の心材は美しい淡赤色をしていますが、伐採木の中にはときどき黒く変色したものが現れます。黒心と呼ばれるこの材は、水を多く含む上に、見た目が悪いことから木材市場で低く評価されています。こうした黒心は遺伝によるほか、病害虫や幹への障害が原因で起こるといわれています。

嫌われものの黒心材ですが、土台に使われるなど耐久性が評価されている地方もあります。本県から、シロアリの多く生息する沖縄などに黒心材を出荷していたこともあるそうです。そこで研究会で赤心、黒心について調べてみました。

まずイエシロアリを用いた試験では新たな殺蟻成分が見つかりました。これらの成分をろ紙に含ませ、シャーレでイエシロアリ33頭を飼育したところ、3日ほどですべてが死滅するという、極めて高い殺蟻性を示しました。

また、黄色ブドウ球菌を用いた試験では、抗菌活性を示す値がヒバなどに含まれるヒノキチオールよりも高く、抗生物質に近い成分もみられました。そして黒心の殺蟻・抗菌成分は赤心に比べ、たくさん含まれていることが分かりました。

植物は傷つくとフラボノイドなどのポリフェノール成分が増加し、濃い色となるそうです。黒心材の変色も、何らかの強い自己防御機構が働いているのではないかと考えています。

徳島すぎの伝統

06img徳島県では、豊富な木材資源を背景に古くから林業が発達しました。
本県林業が世に知られるようになったのは奈良、平安の頃、あるいはそれ以前からといわれています。鎌倉、室町時代には古文書によって木頭材が近畿で使用されたことが確認されています。

森林林業の歴史をひもとくと、いろいろな出来事が関連しあい、今につながっていることに気づきます。

藩政時代には、森林は厳しい管理下に置かれました。藩祖の蜂須賀家政は1606年に奥山定書五カ条を定め、森や木を藩主自らが所有することとし、伐採などを厳しく取り締まりました。このような森林保護策には、城下町の建築資材を確保するほかに軍事目的があったと考えられています。

このころ、徳島藩には阿波水軍という一団があり、全国屈指の海軍力を誇っていました。城下の安宅は水軍の軍艦を確保する軍港として栄え、大勢の船頭や加子が住んでいたといいます。

そして軍用船の用材を確保しておくために、森林内の大木が詳細に報告されました。とくに大切にする樹木を真木(ケヤキ、モミ、ツガ、杉、ヒノキ)、五木などと呼び、計画的な伐採が行われました。

ちなみに阿波水軍の造船廃材は船大工に払い下げられ、彼らが内職として始めた、げた、建具づくりは後の徳島市での木工家具製造へと発展します。

さて、阿波水軍が活躍した本県の他勢は一方では海軍の発達を促しました。

室町時代の古文書には、現在の神戸港付近に一年間に阿波の船が122回も入関したと記録されています。このうち海部船籍のものが半分近く、海部のほか南部船籍のものが九割を占めていました。船には藍や穀物、海産物のほか、たくさんの材木や槫(くれ=屋根ふき材)が積まれていました。さらに鎌倉時代までさかのぼると、京都下鴨神社の造営に木頭産材を寄進したという記録があります。これらのことから県南部は木材の一大産地であり、古い時代から近畿へ向けて木材を運んでいたことが分かります。

昭和初期には、那賀川河口に西日本有数の製材産地が形成されます。木頭林業の杉を原料としてひかれた薄板は阿波の三分板と呼ばれ、阪神市場で家屋の外壁材やへい回り板の八割を供給するまでになります。当時は不況期でしたが、薄くかつ高速で製材するという、いわば技術革新によってシェアを伸ばしました。

「徳島すぎ」の原点には海を越え利用されてきた歴史と、民有林を支えた人々のエネルギーがあるようです。

正直の証「認証木材制度」

徳島県が作成した「徳島県木材認証制度のためのガイドライン」に基づき、徳島県産材であることを証明する「産地認証」、徳島県内の製材所等工場で加工された品質性能に優れた木材製品であることを証明する「品質認証」、さらに、違法伐採対策としての「合法性の証明」を行うのが「徳島県木材認証機構」です。徳島県森林組合連合会と徳島県木材協同組合連合会で組織されています。この制度により、県産材のブランド化を図るとともに、より一層の木材の需要拡大と森林・林業・木材産業の振興を図ることを目的としております。

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