林業家:徳永惠一さん

もくさん

株式会社もくさん

徳永惠一(とくなが・えいち)さん

profile

昭和13年に生まれて以来、勝浦郡上勝町に現在も住む。昭和46年7月、上勝町森林組合に勤務。平成14年に広域合併により徳島中央森林組合となり、平成15年の 65才定年退職後、嘱託員として『株式会社もくさん』と兼務で勤務している。森林組合正職時代、木造住宅(日本建築)の木材供給を20棟あまり行った。


※“葉っぱ事業”で有名な上勝町の事務所に伺いました。

もくさん

木を使うというのは、その“力”を使うということです。

林業をする人間は、どういう土地にどんな品種を植えたらいいか、当たり前に知っています。なんでも南向きがいいというわけでもなくて、松やヒノキは、南向きで赤土のところが良い。

杉は、北向きで黒い土が良いんです。実際に昔の人が植えて育てて、それだけでなく、使ってみての経験から言われていることですからね。材木として使えるのは植えて50~60年経ってから。じいさんやひいじいさんが植えてくれた木を自分が切る、それくらい気の長い仕事です。

仕事の内容は、植林から始まって、下刈り、枝打ち‥‥中でも下刈りが一番辛い仕事ですね。杉やヒノキの苗は成長が遅いから、一年草の雑草に背丈を抜かれてしまって日が当たらない。

それを草を刈って、出してやる作業です。雑草が伸びる梅雨時期から7、8月頃までの作業だから、蜂はおるし、マムシはおるし、大変です。これを10年、15年くらいはしますね。

もくさん15年目くらいからは枝打ちをして、20年がきたら間引きをする。20年経っても、太さは直径10cmとか15cm程度ですから、ほとんどお金にならない。それから枝打ちして、5年くらい経ったらまた間引き。この間引きのときに、間伐材が少しお金になる。だから、植林してから25年間は、ホントにお金にならない、悪い木を間引いて、きれいなのを残すだけの作業です。

ちなみに杉は種からできます。花粉が飛んで、交配して種になる。木には、その種から育てた苗を植林する“実生(みしょう)”と、“挿し木”という二つの方法があります。挿し木は、種の素性、系統がはっきり分かっているから、品質が安定している。ただし、自分で土に根を下ろしてないから弱い。台風が来たとき、全部倒れてしまったりします。実生は、どこから花粉が飛んでくるか分からないので、育ってみないと品質が分からないところもあるけど、自分で深く根を下ろすので、“芯持ち”と言って、強い木になります。このあたりでは、斜面が多いこともあって、実生の苗を植えることが多いですね。

杉やヒノキは、しっかり植えさえすれば、基本的には真っすぐに伸びるんです。ただし上勝みたいに急傾斜の山は、木がどうしても前に倒れるのを、自然に起きようとする。人間も斜面に立ったとき、落ちないように足を踏ん張るでしょう。そういう力が働いて、一本の木でも、斜面の下側、前側のほうが強くなる。それで、木に“アテ”と“ミ”という性質の部分ができて、製品にしたときに、“おこったり、いばったり(曲がったり割れたり)”するんです。また、南向きだとそこに日が当たって、前側のほうが後ろ側より太ってきて、年輪の中心がずれてくる。

もくさんこういう木を製品にするとき、その個性をよく見て板に引かないと、製品になってから狂ってしまう。いまは“木取り”をできる人が少なくなったから、建ててから木が曲がったりして、クレームが出るケースもありますが、ベテランなら、その木がどんな育ち方をしたか、見ればわかる。それをわかって製品にできたら、木の値打ち、強さがしっかり出てくるんです。

奈良の法隆寺の五重の塔なんか、曲がった木を使ってる。この木はこちら側が強いから、こういう方向に力が加わってもたわまないと、そこまで木の性質を読んでるんですね。木を使うということは、自然に大きくなった、その力を使うということです。木は切ってからも、腐るまで、育った性質を持っている。それを十分活かして使ってやれたらいいですね。

昔は製材業者さんが山まで来て、自分で木を見て、選んで切って持って行ったけど、いまは苗木を作る人、植林する人、枝打ちする人、間伐する人、切り出す人、製材する人‥‥と分業が進んで、全部が分かってる人は少なくなりました。

でもこれだけ手間と年月をかけて育つ木ですから、木を作る側も、製材する人も、設計する人も、そして住む人も、その良さ、性質を分かった上で使ってくれたら良いですよね。そうしたら木の値打ちが出てくる。

「こういう木をこういう風に使っているからこんな力にも耐える」と、人にも説明できて、自慢できる家になる。そんな風に、楽しみながら住んでもらいたいと思います。


徳永さんが所属しているのは・・・

もくさん


(株)もくさん


徳島県上勝町の豊かな森林資源を守りながら、地域の活性化を推進する第3セクター方式による株式会社です。


「地球環境の保全」をテーマに、森林の管理・育成から、 住宅の設計・施工までを総合的に取り組んでいます。


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