建築士:根岸徳美さん

TSウッドハウス

UN建築研究所

根岸徳美(ねぎし・なるみ)さん

profile

1964年徳島市生まれ。神戸大学工学部建築学科卒業。東京の設計事務所を経て93年、植村成樹氏とUN建築研究所を設立。設計の傍ら、県内の集落や民家を実測調査し、伝統的構法の住まいの良さを再確認。06年「第3回真の日本のすまい提案競技」で「サンゲンカク小さな木の家からはじまる暮らしの提案」が国土交通大臣賞を受賞。08年「佐那河内小中学校一体型校舎新築事業設計コンペティション」最優秀賞受賞。

 


木の家のいちばんの良さは心地よいこと。建築現場も木のいい香りがします。

TSウッドハウス徳島の木材を使うようになったのは、17年前に帰郷し、設計事務所を開設してからです。子どもの頃は行動範囲もせまく、徳島のことをほとんど知らずに県外に出たので、戻ったときは発見の連続でした。いろいろなものがとても新鮮に感じました。カタログには載っていない地元の木や土などの素材がとても魅力的でした。また、県内には古い民家がたくさん残っていて、「阿波のまちなみ研究会」に所属し、民家の実測調査に参加するようになりました。長い年数を経て、現在も人が住んでいる民家は、生き生きとして、家族の日々の暮らしを包みこんでいるおおらかさがありました。お施主さんとも相談して、徳島のスギやヒノキを使う木造住宅に取り組むようになりました。

木のことは、大工さんや林業家、製材所の人たちに教わりました。強度の高い梁材の挽き方、スギの性質に合った仕口(接合部)、水廻りや外部は腐りにくい心材(赤身)を使うことなど、数えたらキリがありません。木を見て、木を生かす大工さんの技術は、道具が機械化されてもしっかりと残っています。昔からある民家のように、柱や梁を室内にあらわした住宅を設計するようになりました。

TSウッドハウス徳島の木をふんだんに使って家を建てたいのだけれど、予算が足りないというお施主さんには、間取りを工夫して要望より少し小さな家を提案し、総予算を合わせるようにしています。私たちが設計している住宅では、木材費は工事費の2割程度なので、少し面積を減らしたり、設備機器をシンプルなものにすることで調整できる範囲です。家を小さくすることで、外が広がり、外とのつながりを生かせば、小さいながら心地よい家になります。打合せを何度か重ねて、お施主さんがおっしゃる言葉をつなげ、その家族が普段どんな様子で過ごしているか想像しながら設計します。いろいろな生活の場面を想像しながら進めると、最終的にはとてもシンプルな間取りになります。暮らしや家族の変化に対応しやすくメンテナンスしやすいことも、このような家づくりの良さです。

個性的な銘木も魅力的ですが、よく手入れされ、素直に育った徳島のスギやヒノキは、普段の暮らしの中で大きな面積に使っても、心地よく落ち着けます。毎日長い時間を過ごす場所にふさわしく、住む人にやさしいのではないでしょうか。もちろん、製材所の人たちや大工さんたちと一緒に、使う場所によって、強度や性質、色目など、適材適所に木配りをします。私たちは、林業家が長年大切に育ててくれた木を、住む人に手渡す役割。その家に長く住み続けてもらうため、新建材にはないこのひと手間はかかせません。

TSウッドハウス木の家のいちばんの良さは、心地よいこと。建築現場にも木のいい香りがします。設計した家ができあがると、小さな子はすぐに裸足になったり、床を転がったりして喜びます。やっぱり気持ちいいのでしょう。体中で気持ち良さを表現している姿を見ていると、子どもたちが日中のほとんどの時間を過ごす学校や幼稚園に木(特に近くの山で育った木々)を使いたいと思うようになりました。現在、設計している佐那河内小・中学校では、校舎の内部に徳島のスギやヒノキを使う予定です。私たちの世代は、在学中に木造から鉄筋コンクリート造へと校舎が建て替えられてきた世代です。幼稚園や小学校の低学年で過ごした木造校舎の柱や床、木の机や椅子の肌触りは、今でも懐かしく思い出されます。鉄やコンクリートなどの堅いものだけに囲まれていると、心まで堅くなってしまうような気がするのですが、木に囲まれていると穏やかな気持ちになれます。当初、木造で提案したかったのですが、現在の法規と決められた工期ではかなり無理があることが分かり、内装の中で、特に子どもたちが直接触れることのできる床や壁、家具や建具に徳島の木を多用することにしました。敷地に面して流れる園瀬川の源流に、県行造林(村と県が分収契約を結んで管理している森林で、県が間伐などの手入れを行っている)があることが分かり、50年生の桧の間伐材を校舎の床板に使えることになりました。実教材として、生まれ育った地域の自然や技術を子どもたちに伝えることができればと期待しています。

TSウッドハウス最近では、木造住宅の梁材に関しては、ほぼTSウッドハウスさんにお願いしています。設計期間中、おおまかな間取りが決まると、構造スケッチの段階で相談に行きます。着工まで期間のある場合は、ひとつの山の木で製材し、詳細設計の間に乾燥してもらいます。伐採ツアーで自分の家に使う木を伐り出す様子を体験できる場合もあります。期間のないときには、すでに乾燥できているものの中から選んでもらいます。「その寸法のものはないけど、これならある」などと図面を見ながらやりとりをして、乾燥材に合わせ組み方や継手の位置を変更することもあります。TSの材は、山で葉枯らし乾燥をした上に製材後に桟積み、自然乾燥しています。そのため、色艶や香りがよく、木が持つ油分を含む成分が残るため、大工さんが構造材をあらわして組む家づくりに向いています。自分の家に使われる木材がどこで育ったものかわかることは、住む人にとって安心でもあり、愛着も大きいようです。


根岸さんが提携しているのは・・・

TSウッドハウス(協)

TSウッドハウス(協)

良質の徳島すぎを構造材として使用したTSウッドハウスの家。山と木を愛する専業林家の視点から日本の住宅を見つめます。

建築家、製材会社、大工のネットワークを使った家づくりを進めています。

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