建築士:渡邊速さん

ハウスG

(有)渡辺企画設計代表

渡邊速(わたなべ・すすむ)さん

profile

1949年阿南市生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、(株)大林組東京本社設計部(6年間)、徳島県庁住宅課(10年間)を経て(有)渡辺企画設計を設立し現在に至る。
徳島大学工学部で教鞭も取る。住まいづくり、まちづくりに関するコンサルタント業務の他、住宅設計なども手がける。ハウスG住宅センター(協)の設立には構想段階から協力し、住まいづくり教室の講師も!

 


情報を多く求めるより、信頼できるパートナーと出会うことが大切です

※「住まいづくり教室」を開催しているハウスG住宅センターで伺いました。

県産材の使いどころは「用」と「美」を考えて

ハウスGハウスGは「県産材を多用した空間づくり」をお勧めしていますが、そのポイントは2点ありま
す。ひとつは、杉板などを納戸やクロゼットなどの収納スペースに使用する‥‥これは、木材の湿気調整機能という「用」に期待した使い方です。
二つ目は、「美」というと少し大げさですが、県産材のスギやヒノキは、他と異なる固有の趣・雰囲気を持っていますので、それが生きるような使い方です。例えばハウスGが提唱しているものに大黒柱がありますが、それと組み合わせてスギやヒノキの板を縦または横に貼っていく。すると、華やかではないものの、落ち着きと和らぎがあり、どこか懐かしい気分にさせる空間が得られるように思います。また、新しい材料(新建材)とスギ板などを組み合わせるような使い方も面白いですね。色合いだけでなく、質感(テクスチャ)が異なる2つを同一壁面に併存させることで、新鮮な室内空間が演出できるのではないかと考えています。
その他、県産スギの梁を天井に見せる、「現し(あらわし)」という手法もあります。平板になりがちな天井に変化を与えるだけでなく、天井高を大きくして、空間を有効に使うという効用もあります。寝室は梁の下に天井をつけて天井高は2m40cm、リビングは天井を「現し」にして天井高2m60cm、といったようなやり方ですね。構造材を意匠としても使う、ということです。
部屋の大きさに比例して、天井高をできるだけ高く取るという一般的な要望に応えられます。本来は裏方のものが表に出るわけですから、エンドユーザーの抵抗感がある場合もありますが、「現し」にする場合はもちろん、そうしても大丈夫な材料を提供するようにしています。

双方向の情報伝達が可能な「ハウスG住まいづくり教室」

ハウスGここでは、「ハウスG住まいづくり教室」を定期的に開催しています。これはハウスG住宅センターが諸活動の核として位置づけている事業で、開始以来10年を越えて、開催回数も60を数えています。教室開催を周知する新聞広告や通信紙に「知りたいこととお伝えしたいことが学べる場」というキャッチコピーを付けていましたが、この文にこそ住まいづくりの教室の本質というか、存在理由があります。一般論的に、住まいづくりの第一歩は情報収集だとされています。TVのCM、展示場、雑誌・カタログ、新聞・チラシから最近のインターネットまで、情報収集の手段はさまざまです。それらの多くが、手軽さを競っていますが、「ハウスG住まいづくり教室」は、決して手軽ではない。参加者の皆さんに多大の犠牲を強います。わざわざ会場に足を運び、長時間椅子に座って学ばなければならないですからね。
しかし、ここで得るものは小さくないと思っています。多くの消費者の皆さんが知りたいと思っていることだけでなく、専門家側から見て知っていてほしい、考えて欲しいことも併せて伝えるからです。その中には、ハウスG住宅センターが用意している住宅供給の仕方とは異なる、ありていに言えばセンターに不都合な話も含まれます。つまり、こちらにとって宣伝になる、都合のいい情報だけでなく、客観的な情報を提供しようという姿勢を、できるだけ保ちたいと考えているのです。お客様の選択肢を包み隠さずご紹介して、それぞれの場合、どういうメリット・デメリットがあるかを伝える。自分たちのいいところばかりじゃなくて、偏らず、公平に情報を伝えるように務めています。
エンドユーザーが知りたいことだけでなく、専門家の側から、「これはみなさんが考えている以上に大事な問題だから、しっかり考えて欲しい」ということも話します。建築士会の住宅相談会での相談内容の8割はトラブルなんです。具体的には「手直ししてくれない」とか。そういうトラブルを招く一番の原因は、住宅を建てる際の役割分担ができてない。施主さんは素人ですが、専門的な仕事の分野を誰に任せるかという、基本のところを割と大雑把に捉えて、真剣に考えていなかったことに原因がある場合が多いんです。だから、これは大事ですよ、という説明をしているわけですね。

ハウスGもうひとつ重要なことは、講師が一方的に話すのではなく、できるだけ参加者の皆さんからも、積極的に質問をもらうように心がけている点です。実際にはなかなか難しいのですが、可能な限り、一方的ではない、双方向の情報提供となるよう努めています。また、「プロとつくろう!マイホームプラン」という、自宅の平面計画をつくる講座では、ワークショップ的なやり方を導入して、皆さんの参加度合いを高めるように工夫しています。講義を聴くというより、イベントに参加しているような感じをイメージしてもらうといいかも知れません。

教室の講座レベルはやや高めで、少し難しく感じる方も多いようです。しかし、長時間がんばったという満足感もあるのでしょうか、開催後のアンケートではおおむね好評との結果を得ています。それは嬉しいことなのですが、最近参加者の数が停滞気味なのが残念なところです。新聞広告等だけではその内容・質が分かりにくいのと、やっぱり長時間教室に拘束されることに、抵抗を感じるからかも知れません。講座は短いものでも一日5時間×2日間、週末をまるまる犠牲にしなきゃいけない。長いものは一ヶ月半にわたり、金曜日の夜に2時間~3時間×5回と、現場見学会に行っていますから。以前はユニークな試みとして捉えられていましたが、最近はあちこちでいろんなイベントもあるので、と目新しさがなくなってきたのかも知れません。ただ、内容的には大切なもの、良いものをやっていると確信していますので、これからも発信していきたいと思います。

「まとめたことを伝える」から「伝えながらまとめる」へ

一般的に、住まいづくりの教科書には「家族で話し合ってまとめたもの(できれば優先順位を付けて)を設計してくれる人に伝えましょう」とあります。しかし実際には、これはそう簡単なことではなく、一筋縄ではいかないんです。まとめる人たちは、失礼ながら建築、設計については素人です。伝える内容が不十分なこともあれば、互いに矛盾するものも含まれる。そしてもちろん、伝えそこなう事項もありうるのです。
ですから、建築主の方には、次のようにお願いしています。
「要望をまとめていても、まとめていなくても、ご自分の考え・思いをどんどんおっしゃってください。それに対し、建築士の私も意見を言い、提案します。時間はかかるかも知れませんが、そのやりとりを通じてこそ、あなたの家づくりの意見が整理されていきますよ」と。このような、「伝えながらまとめていく」プロセスが、私の個人的な見解ですが、非常に重要だと思っています。
もちろん、伝えるときに具体的なもの、たとえば材料とか、形とか、生活習慣などを含めていただけるとありがたいですね。建築士との話がより深まり、まとめやすくなるのではないでしょうか。
実際のやり取りの中では、建築主さんが発言される内容と、期待されているカタチや空間とが、案外一致してないことがあるんですよ。それが、何回か建築士と話をするうちに、いろいろな例を見せてもらったり意見を聞く中で、勘違いが正しいものに近づく場合もあるし、「自分はこういうことが大事だ」と考えていたけれど、なぜそう思っていたのか、もっと奥にある別の理由に気がついたりする‥‥そういうこともあり得ます。
そういうのは、会話を重ねていくことで初めて到達できることなんです。「ゆっくり考えて、すばやく実行」というのが、家作りの極意だとは思うんですけれど、建築主が自分の知識の中で作った形より、なぜそうしたいのかということを話していただくことで、建築士側からもっといい提案ができるかも知れない。「こういう行動をするからここにこれだけのスペースが要る」と考えておられるけど、その行動はここではなく、実は別な場所でやったほうがいいのでは?という場合だってある。ですから、どんどん話をしていただきたいと思っています。

これから木の家を建てようとする人へのアドバイス

ハウスG木の家を建てるとき、郷土愛を少し発揮していただけると嬉しいですね。これはアドバイスというより、お願いに近いでしょうか。これは私が以前から思っていることです。
郷土のモノとヒトを使う。モノは当然のことながら、スギやヒノキなどの県産の木材が主なものです。「地産地消」を住まいづくりでも実行してもらえたらと思います。ヒトは、人、または組織。家を設計し建てる人々のことです。各地域に根ざして住宅建設に携わっている人たちは、有名や俳優やタレントが登場するようなコマーシャルは流せません。残念ながら、情報発信力が非常に小さいのが現実なんです。大きな住宅メーカーや建築会社の、圧倒的なテレビなどのマスコミを使った情報発信力に比べて、地方の業者は武器の少ない、いわば竹ヤリの戦いをしているようなものです。しかし、それでも消費者の皆さんに自分たちの住まいづくりに対する思いを伝えたい、技術を持っているところを知って欲しいと、日々がんばっています。ですから、消費者の皆さんには、いまよりほんの少しでもいいから、彼ら(地域ビルダー、住宅建設業者)のほうに近づいていって欲しい。間近で彼らの県産材を使った仕事を見て、その考えに耳を傾けてもらえたらと思います。

木の家づくりに関するアドバイスは数多く、とてもここでは話しきれませんが、現時点で大事と思われることをお話ししてみます。

■メリハリの利いた情報収集に努めること(がんばりすぎる人へ)

「家づくりは人生の一大事業。失敗は許されない、懸命に努力しなければ」――などと考えるからでしょうか、まじめな人はとにかくがんばる。がんばって、いろんなところに出向き、いろんな手段を使ってさまざまな情報と出会い、それを自分のものにしようとする。その結果、混乱状態に陥り、自分が何を大事にしていたのかさえ見失ってしまう、ということにさえなりかねません。
建てようとする家での家族の暮らし方、その現在の姿と将来の姿をしっかり描くこと、また、設計や工事を誰に頼むか、つまり、自分ではできないことについての役割分担をどうするかなど、ごくごく基本的なことがらをきちんと決めること、そこに焦点を絞るべきです。
そうしたメリハリの利いた努力の結果、信頼できる相手と出会うことができれば、皆さんの住まいづくりは半分以上成功したと言えるのではないでしょうか。言うは易し、の助言かも知れませんが。あまり多くの情報を探しすぎないほうがいいと思います。

■木の住まいに対する助成策を活用すること

そう多額ではないのですが、国の助成策には木造に限定したものもあります。補助金をもらうための条件を満たすことや、取り組むタイミングが難しいなど、越えるべきハードルは低くないのですが、助成策を活用することができれば住まいづくりが少し楽にできるようになります。
ただし、助成策の精度の中身は分かりにくい。適切な機会を利用して、専門家に説明してもらうことをお勧めします。そして、その機会が「ハウスG住まいづくり教室」であったら、当方としては非常に嬉しく思います。

いろいろお話ししてきましたが、とにかく自分で全部をやろうと思わないで、いい専門家に出会って、うまく役割分担できれば、満足のいく結果が得られると思います。家づくりは人生で一回だけのことだから、昔は親から教えてもらったものですが、それは僕らの年代までのことでしょう。いまの30代の方たちは、家作りについて親御さんから教えてもらう機会がなくて、自力で建設業者を探さなければならない。何百件も事例が載っているような雑誌の中から何を基準にどれを選ぶかと言ったら、それは大変な作業だと思います。
まずは、「信頼できるパートナーに出会えるポイント」に出会わないといけないと思うんです。「住まいづくり教室」の、一番最後のまとめの言葉は、「出会い」なんですよ。しかしこれも、いまは選択肢がすごく豊富で情報も多いから、マジメな人ほど、困るような状況じゃないでしょうか。

良い業者かどうかを見抜くのはなかなか難しいんですが、ひとつは、自社に不都合なことを言わない会社は辞めたほうがいいですね。なんでもかんでも大丈夫だという、イエスマンのような会社は考えものです。「ちょっと考えさせてください」って言うところのほうが、たいがいは良いはずです。この、「どんな業者に仕事を頼むか」「どういう設計事務所がいいか」というのは、エンドユーザーの最大関心事です。でもそれは、公的な場所ではなかなか言えない。だからその回答は、エンドユーザーは常に得られていないんです。また、回答を得るために努力しようがないところもある。だから一生懸命家づくりをしようとする方は、そのエネルギーを、私たち建築・設計のプロから見たら、「そんなところまで知らなくても大丈夫なのに」といようなところにまで一生懸命に情熱をつぎ込んでしまう図式になっているような気もするんです。悪循環ですね。
ですから、時間を割いて「ハウスG住まいづくり教室」に来てくださった方には、良い業者・設計士と出会うために大切にするポイントを始め、家づくりを考える上でキーとなることを、効率的に、しっかりお伝えしたいと考えています。


渡邊さんが提携しているのは・・・

ハウスG

ハウスG住宅センター

徳島県上勝町の豊かな森林資源を守りながら、地域の活性化を推進する第3セクター方式による株式会社です。

「地球環境の保全」をテーマに、森林の管理・育成から、 住宅の設計・施工までを総合的に取り組んでいます。

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