大工:中谷嘉明さん

もくさん

株式会社もくさん

工場長&大工 中谷嘉明(なかたに・よしあき)さん

profile

昭和27年生まれ。建具職人、工務店経営を経て、現職に。上勝町に「木材おこし実行委員会」が発足した際、パネル住宅を作るための木材の加工サンプルを依頼されたのがきっかけで、だんだん参加するように。平成7年の「もくさん」設立から参画し、いまは現場も見ながら、指導もする立場に。趣味は釣りと映画鑑賞。休みには夫婦で映画館に行き、一度に3本見ることもあるという。


木の力を生かす、地域ならではの先人の知恵を伝えます

※川のせせらぎと鳥のさえずりが聞こえる、上勝町のモデルハウスで伺いました

もくさんこのモデルハウスは2010年4月にオープンしました。これだけの木や板が全部ここで手に入るという、もくさんの材料の展示場であり、木のよさの対感場でもあって、宿泊体験もできます。寝具は10人分用意してあります。上勝町に視察や調査で来られるグループの方も使われますので、予約で土日はずっと埋まっていて、平日も月に数日空いてるくらいですね。ここでは定期的にイベントもしています。月に三回くらい、カフェしたり、ケーキ屋さんしたり、花屋さんしたり。この辺はそういう店が一軒もないので、大人気です。来られるお客さんは、町内半分、徳島市内が半分でしょうか。最近はツイッターで知らせて、友だちをつれて集まってくれる方もあるんですよ。

もくさん以前に自分で工務店をしていたときは、新建材を扱うこともありました。自然の材と両方知っている立場から言って、木の家の魅力の一番は、自由設計ですね。大手メーカーのものはほとんど決まっているタイプのものを土地にあわせてむりやり収める感じですが、木の家は敷地に合わせて、屋根の勾配でもなんでも、自分の好きなようにオリジナルなものが自由に作れます。もちろん現場はそのたび違う、おんなじ家はないですからね。建てる側も楽しいですよ。

もくさんもくさんの一番の特徴は、パネル工法です。工場で、ある程度の面積まで作ってしまう。現場では基礎、土台を作って、柱に作ってある溝に壁面をスポッと落とし込んだら、もう内側は仕上がっている。このモデルハウスの大きさのものでも、壁も屋根も床も、三日で主なかっこうはできてしまって、四日目にサッシを入れようかというような速さです。見る間にできて、周りの人も驚きますよ。
この工法の良さは、近所に騒音が出ない、ゴミが出ない、工期も短縮できる。現場で雨が降ったら具合が悪いということもない。また、工場で造作まで作ることによって精度もあがります。ただ、そんな工法ですから、一番気を使うのは取り扱いですね。工場から現場まで運ぶ間に傷がつかないように、それは注意しています。

お客さまは県外にも多いですね。京都から来た方が、お子さんがアレルギー体質で、外食のときなど必ず反応を示すんやけど、この家ではそれが全然なかったとうことで、ぜひ木の家を建てたいということになり、京都まで建てに行ったこともあります。もう7、8年前になりますが、いまだに行き来がありますよ。その方には、この上勝町が第二の故郷みたいになってるんですね。

杉は調湿効果があるし、保温力もいいので、冬は本当に温かいです。このモデルハウスの暖房は、このストーブひとつなんですが、二階までずっと熱が回るんで、どの部屋も温かいですね。木自体も、触っても冷たくないですし。ヒノキはちょっと硬いけど、杉は触ってもやわらかいしね。難点といえば傷がつきやすいけど、それも「つくもの」と思っていれば気になりませんしね。

もくさん「木は木となりて生き続ける」というのは、こういう木材になってもずっと生きているということなんです。加工されても生きている、呼吸している。特によく分かるのは家でタバコ吸うたり焼肉したりしたら、あくる日イヤなにおいがするものですが、木は呼吸してますから、タバコや焼肉のにおいも吸い込んでしまう。においを消すために化学物質を使うと、また別の不安が起きますが、最初から自然のものを使っておれば、そういう心配もないということですね。

もくさんは山から木を切り出してきて、一貫して材料から作ってますので、木のことも良く知ってます。木にもひとつひとつ顔というか、個性があるんですよ。風がよく当たるところでは、もまれてゆがんだりもしとるんですが、そんな木はすごい力を持っている。昔の田舎の家はよく、梁に曲がった木を使ってあるでしょ。まっすぐの木では垂れるけど、曲がった木をアーチのように使うとなかなか下がらない、垂れない。適材適所といいますが、みんなまっすぐで素直な木がいいというものでもないんです。人間と同じで、個性があったほうがいい、みんなおんなじだったら面白くないでしょう。ちょっとヘンクツだけど、力を持っている、そんな木の個性を生かすように使うことです。

私は以前建具職人でした。建具をつくるとき、木の性格を読めんかったら、そのうち狂いが生じて、建具が動かんようになるんですよ。木は工業製品と違いますから、同じサイズに切ったら同じ材料のように思うけど、そうではないんですよね。育ち方で全然違います。まっすぐに削ってある柱でも、将来どっちにそるかを考えて使う。ゆがむほうを壁に向けて、壁で抑えておいたらいいとかね。暴れる木は板にしたら余計に暴れるので、大きなままで使わんとアカンけど、素直な木を板にすると、枚数もたくさん取れる。製材するときにもそういう工夫がいるし、建てるときも同じです。色味だとか目合いだとか、デザイン的な見た目のことも大切ですけど、建ててから狂うのが一番困るわけですから、そこを見極めて使っていかないと。上勝の木はもともと傾斜が強いところに生えているので、ゆがんだ木も多いですけど、それをうまく使うのが匠の腕でしょうね。

もくさん最近では徳島でも、ひさしのない箱のような家を見かけますが、上勝は特に雨が多いので、ひさしは絶対必要なんです。外壁にしても、外に貼る材料のメーカーが作ったマニュアルもあるんですが、書いてある通りにしたんでは、徳島ではダメなんです。雨や台風が多いですから、そんな施工では雨が入る。外壁を貼っておいて、その上からまた覆うように貼らなければいかん。そういうふうに、土地によって工法も違う。“全国一律”は全然あてにならんのです。

適材適所というのは、材料だけでなしに、工法も、その土地にあったものでないとね。木について、また木で家を建てることについて、先人の知恵はすごいものです。地元の大工さんが昔からしてきたことが大事です。最近は若い設計士さんがデザイン優先で考えることもあるけど、建築に携わる人は、「最近は昔と違う」などと言わずに、昔のいいところをしっかり勉強して、どんどん取り入れて欲しい。私も先人の知恵を、自分の経験も含めて伝えていきたいと思います。


中谷さんが所属しているのは・・・

(株)もくさん

(株)もくさん

徳島県上勝町の豊かな森林資源を守りながら、地域の活性化を推進する第3セクター方式による株式会社です。
「地球環境の保全」をテーマに、森林の管理・育成から、 住宅の設計・施工までを総合的に取り組んでいます。

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