(2)材をつくる人(製材所)

製材所:三枝康弘さん

TSウッドハウス

三枝林業専務取締役/TSウッドハウス協同組合

三枝康弘(さいぐさ・やすひろ)さん

profile

1972年生まれ。大学の農学部林学科で林業経営を学んだ後、帰郷。TSウッドハウス協同組合の同世代の仲間と共に、研究機関と連携して杉の成分を研究・分析して数値化する試みや、新しい販路開拓にも取り組んでいる。趣味はホルン演奏。今も徳島市の吹奏楽団に所属し、コンサートにも参加している。


製品の質にこだわりながら、数値でその良さを証明しています

※敷地内に自然乾燥の材木がたくさん積まれた、那賀川に面した事務所で伺いました。

TSウッドハウス大学では林学科を専攻していましたが、山に入って、調査プロットを設定して、対象木の胸高直径や樹高を測定したり、そのデータを解析したりというフィールドワークが中心でした。根を詰めて勉強するのが苦手な自分に合っていて面白かったですね。帰郷して実家を手伝おうと思ったのは、先祖代々続いてきたものを引き継がなければ、という義務感が大きかったです。でも、当時は意識していませんでしたが、今から考えると、小さいときから現場が身近にあって、当たり前に林業や製材業に接してきたことも大きかったんでしょうね。

現在の主な仕事の一つは丸太の選別です。この木はこの部分をこう使おうと、自分の目で判断して梁桁や柱、内装材など、用途によって丸太を選び分けます。思ったような製品が取れるとすごく楽しい。逆に、思ったようにならなかった時は、悔しいし、まだまだ勉強不足だなと思います。判断を間違うと、せっかくの立派な丸太を無駄にしてしまう可能性もあるわけで、無垢の木材製品を作る仕事は、自分の判断が製品にダイレクトに反映されるのが面白いですね。

TS・長さ8mの特注品僕が帰郷した当時、TSウッドハウス協同組合(以下、TS)が立ち上がって3年目でした。三枝林業もTSのメンバーでしたので、僕もすぐTSに関わるようになりました。最初はここでやっていることが当たり前だと思っていたんですが、いろいろな方と接していくうちに、TSは特殊なものづくりをしているということが分かってきました。例えば、1ヘクタール分の山林の杉を伐採して丸太を準備しても、その中で、最終的に2~3割しかTSの名前で出せる製品にならない。そういった厳しい選別をする、ポリシーのある組合なんです。

TSはもともと、林業家が「自分たちの山で育てた木を自分たちが納得できる使い方をしていただこう。そして山を育成して後世に残していけるだけの対価をいただこう」ということを目指して立ち上がった組合です。「これは良い木だ」と自信を持って送り出しても、買われた先で、構造材が全く見えない「大壁工法」の家の材料になってしまっては、せっかく手塩にかけて80年90年と育ててきたものが活かされない。この木をちゃんと見せるような使い方をしたいと立ち上がったわけですし、また、それなりの対価をいただくことも目的としていますから、品質は譲れないし、そこを揺るがしてしまうと、大元が崩れてしまいますよね。

TSのこだわりのひとつに自然乾燥があります。自然な状態でゆっくり乾かすので、色艶や香りといった杉の良さや成分が全て残ります。「桟積み乾燥」と言いますが、風通しを良くするために、製品を置き、桟を置き、また製品を置き、そうやって積み上げていく。そして、まずは風雨にさらします。最初は雨に濡らした方が、乾燥が早く進むんです。その後、ある程度乾燥が進むと屋根の下に移動させて出荷を待ちます。サイズにもよりますが、構造材だと、少なくとも3ヶ月から、長い場合は1年以上かけて乾燥させます。

ただ、乾燥すればそれがそのまま商品になるというわけではないんです。杉に限ったことではないでしょうが、木にはそれぞれクセがあって、最初のノコの入れ方を間違うと、大きく反ったりねじれたりして製品にそのクセが出てしまう。木取りを間違えずに製材して、まっすぐな製品が取れたとしても、桟積み乾燥している間に、残ったクセがジワジワと出てくることもあります。また、乾燥が進んで水分が無くなることで、ひずみが生じて割れが発生します。片面で収まっている割れなら強度に問題が無いことは実験でデータを得ているんですが、製品の断面を貫通するような割れや、大工さんの切り組みに影響するような反りやねじれがある場合は、例えば6m材の両端から50㎝ずつ切って、5m材にするなどの対応をとる。こういったロスもあります。

TS・自然乾燥木を選ぶときに考えるのは、まず色の良さです。「赤身」というだけあって、杉の心材は通常きれいな赤もしくはピンク色をしているんですが、中には黒ずんだものも出てきます。「黒心材」と言うんですが、黒いとどうしても見栄えが悪いし、実際敬遠されるので、そういった丸太は除外します。また、構造材を製材する場合には年輪幅が大事です。構造材の断面の四隅、あるいは上下両端の部分の年輪が詰まっているように木取りができるかどうか。それには「適寸」つまり、適当な大きさの丸太を選別する必要もあります。大きな直径の丸太で小さな寸の製品を取ったのでは、外側の年輪の詰まった強度のある部分が活かされない。だから適寸を見るのが大事なんです。

ノコにも2㎜とか3㎜の厚みがあって、製材するということは、その厚みの分も削るということですので、ノコを通せば通すほど、出来る製品は小さく、少なくなる。つまり歩留まりが悪くなります。歩留まりを下げないために、いかにノコを通す回数を減らして製材できるか。「この丸太だったら、主製品の他に何が取れるか」と考え判断するのも大事なポイントです。主製品以外の部分は、厚さや巾によって何になるかはいろいろです。厚さが45㎜あれば、寸五角という屋根の垂木材になるし、30㎜なら間柱という材になる。薄いものなら壁の板や、屋根の下地板になる。もっと小さいものなら、かまぼこ板やウニの箱とかにも使っていただいています。できるだけ、使っていただける工夫をして、どうしてもダメな場合はチップに砕いて、紙の材料、パルプにしています。

杉を家に使って一番良いのは「安らぐ」ということでしょうか。杉には安眠を促す香り成分があって、杉に囲まれた部屋では平均3分早く眠りにつけたという実験の報告を見たことがあります。それから、色合いが優しくて目が休まる。また、杉自体が湿気を吸ったり吐いたりする調湿能力を持っていて、年間を通して室内の湿度に大きな差が出ない。柱1本でビール瓶1本分の水分を出したり吸ったりするとも聞きます。こういう材料の良さを、数値で出していくのは大事なことですよね。

TSの前身は「徳島林業クラブ青年部」という団体なのですが、その時代、今から30年ほども前に、森林総合研究所というつくば市の研究所まで、自分たちの杉製品を持ち込んで実験をしてもらったことがあるそうです。梁材に、裂けるまで上から圧力をかける「実大強度試験」というものですね。「杉は弱いと言われるけどそんなことは無いはずだから、自分たちの杉で実験して欲しい」と、徳島から100本ほどを持ち込んだそうで、結果、建築基準法で決められていたよりずっと高い数値が出た。そういう実験をしてデータを出しているので、自分たちの製品に自信を持っていられます。

TS・台車でノコを入れる様子TSになってからも多くの実験をしています。杉の赤身の製品はシロアリに強いとされ、昔から家の土台などに使われてきましたが、きっとそういう成分があるからだろうと考え、分析して明らかにしようと、徳島大学や徳島文理大学の化学系の教授の方々に協力を仰ぎました。その結果、シロアリに強い抗力を持つ成分を特定できました。さらに実験を進めることで、赤身、特に黒心材には、黄色ブドウ球菌の増殖を抑えたり、大腸菌を1時間でほぼ死滅させるような強い抗菌・殺菌作用を持つ成分がある、という実験結果も得ています。また、杉は音を響かせるのでマンションなどの内装には向かないのではないか、と言われることに対しては、それならどんな使い方をすれば内装にも向くのかと、徳島県立工業技術センターと協力して実験し、音が響かない工法の提案もしている。実験好きというわけではないけど、けっこうアクティブに、いろいろ結果を出しているんです。

他にも、癒しや香りの成分分析もして、ある程度の結果は得ています。こういう結果を少しずつでも、仕事に活かしていかなければと思っています。大工さんの経験はすごく貴重で大事なんですが、「昔からこうやって建ててきて、80年経ってもしゃんとしてるだろ?」と言っても、「実証データをいただけますか?」となって出せなければ認められない、だったら数値を出してやろうじゃないか、というモチベーション。それがTSの大きな特徴だと思います。

他の建材とただ真っ向勝負するのではなくて、杉独自の良さがあるんだということを、数値で表すなどしてしっかり伝えたいですね。今は当時のメンバーの子ども世代が僕も含め何人かいて、TSの外でも「徳島すぎクラブNEXT」という組織を作って活動しています。同世代でそういう話ができて、相談しながら活動していけるのは、心強いしありがたいです。

こういった仕事をしていない人にとっては、集成材も無垢材も同じものなのかもしれないし、外材も国産材も同じ木材でしょ?という意見もあるかもしれない。いかに良さを伝えて「それだったら無垢の国産材で家を建てよう」と思っていただけるか。大きなハウスメーカーのコマーシャルパワーはすごいですが、その宣伝力、発信力は学び、活かす必要がある。ものづくりにはこだわってきたけど、作ったものを売る力がまだまだ弱い、それがこれからの課題なんでしょうね。林業に明るい未来が来るかどうか、まだまだ、これからの努力次第です。


三枝さんが所属しているのは・・・

TSウッドハウス(協)

TSウッドハウス(協)

良質の徳島すぎを構造材として使用したTSウッドハウスの家。山と木を愛する専業林家の視点から日本の住宅を見つめます。

建築家、製材会社、大工のネットワークを使った家づくりを進めています。

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製材所:平井賢治さん

(協)スーパーウッディシステム

 

有限会社 平井製材所

代表取締役 平井賢治(ひらい・けんじ)さん

profile

『平井製材所』は、大正5年創業。昭和47年法人改組で現在に至る。

林業・製材・納材業と地域材を一貫生産している。

 

 


ひと山まるごと伐採することで、履歴のはっきりした木材を作ります

(協)スーパーウッディシステム当社は大正5年創業ですから、100年近くこの地で製材をしています。旧の町名で言うと、相生から上那賀町、木頭村、木沢村といった地域が徳島県の原木の三分の一程度を調達するエリアです。このあたりで産出される「木頭杉」が、徳島すぎのブランドの先駆けですね。この流域の木材が川からいかだで流されて、羽ノ浦町、那賀川町で製材されたものが京阪神に数多く出荷されて、それが上質で好評を博して、大人気だったということです。

徳島の林業の歴史を知るには、昭和56年に編纂された「団地のあゆみ」(※1)の中に掲載されている小山四郎さん(※2)の文章が非常に興味深いんです。明治になるとき廃藩置県に伴って、各地の藩有林を国に差し出したのが国有林になったわけですけど、阿波の蜂須賀藩は民間に払い下げたので、いまでも徳島は際立って国有林が少ない、民有林が圧倒的に多いというんですね。徳島で林業が活発に行われたのも、このような背景があって、民民取引で商売がしやすかったのではないかと思われます。

※ 1=徳島県木材団地協同組合連合会創立10周年記念誌

※ 2=当時の徳島木材卸商業団地協同組合専務理事

もちろん、品質も良かった。この地域は南に海部(かいふ)の山がありますが、うねっているような山の起伏のところに、太平洋から入ってくる風が、常に水蒸気がたまっている状態を作る。さきほど紹介した小山さんも書かれてますが、世界の中で年間雨量が最も多いとされるインドのアッサム地方、そこにも匹敵するほど、このあたりは湿度も温度も高く、雨が多い。それが杉の生育に適しておったんですね。色合いや目合いが良くて、非常に大きい丸太が育つわけです。

(協)スーパーウッディシステム国産の杉でこんなに大きな梁が使えると思っていなかったとか、すべて国産材でこんな大きなサイズのものが手ごろな価格で手に入るとは思わなかった、という声は多いですね。お客さまがびっくりするようなサイズというのは、樹齢で言うと60年生から100年生、そういう木がこの地域にはまだたくさんあって、供給にまったく不安はありません。こういうところに着目して使っていただければ、そういう木材も活きますしね。

「色合い」で言えば、杉は全国どこの産地のものでもおおむねピンク色なんですが、徳島すぎは非常によどみの無い、薄い優しいピンク色で、濁っていないし、色が抜けていて美観的にもいい。それは土壌によるところが大きいと思いますね。一方、「目合い」は年輪の幅のことです。木の成長は9月ごろには止まり、3月ごろから水分をどんどん吸い上げて成長する。それで年輪ができるんですが、成長が早いとその幅が大きくなる。年輪幅の狭いものが、材質としては一般的に強度に優れているし、年輪が密に入っていることで、例えば天井板にしても、さざなみのような目がたくさん入って、独特の美しい目合いができるわけです。

製材の加工技術も高かったですね。昔は木材が、生活費や人件費に比べていまと比較にならないほど高価だったので、製品の取れ高を上げるために、薄いノコを使ってオガクズを極力出さずにそいでいく技術が求められたんですが、徳島、特に那賀川・羽ノ浦地域では、ノコの技術が卓越していたので、薄く、しかも速く、高速製材ができた。大きな需要が京阪神にありましたから、いいものを作れば高く売れるので、研究も熱心にされたんだろうと思いますが、徳島の技術は全国でもトップクラスだったと思います。

(協)スーパーウッディシステムいま私どもの会社では、素材調達するまでのこと・・・どういった山でいつ伐採されて、どのような方法で搬出されて製材工場に持ち込まれたか、ということを重要視しています。いまの日本の製材業は、ほとんどが原木市場で原木を買っているのが現状ですが、原木市場では、トラック単位の材料をチョイスして買います。しかしそれでは産地はバラバラ、品質もまちまち、山での乾燥が行われているかどうかもわからない。製材所の人間といえども、どのような山で育ったか、所有者が誰だったか、原木市場に入った段階では分からないんですね。

私どもは、原材料の素性、履歴を知ることで、できあがった製材品の品質も上がると考え、直接、山林から木を切り出しています。ひと山丸ごと、自社所有の山か、山林家の山を買い取るかすることによって、品質の良く似た木を一括で入手できるというメリットがあります。その原木を山元で葉枯らし乾燥する。これは切った丸太を、枝をつけたまま倒して、山の中に三ヶ月ほど置いておく。すると、枝葉の部分から水がどんどん上がって抜けていく。枝葉を取ってしまうと、乾燥しにくいんですよね。この工程を経ることで、より乾燥した状態で製材でき、ひいてはその製材品も色が良く、虫の害も少ないということになります。

(協)スーパーウッディシステム最近は「木頭杉で家を建てたい」というような方もおられます。私どもは「木頭杉」とか「相生杉」という、いわばブランドを取り扱っているので、ひと山丸ごと伐採すれば、それがどこの産地のものなのか、きっちり約束できるわけです。また、木材にも地産地消が言われ初めて、他県の方に、「なんで地元の製材品を使わないんだ」と言われたときに、ただ原木の品質がいいとか製材品の品質がいいというだけではなく、他の地域にはまったくないスタイル、山単位で木を購入して、一軒丸ごと同じ山で育った兄弟のような木で建てますから、色目が似ていて美しい、ということも説明できる。それが付加価値になるわけです。

業界の内部では、材料そのものの品質や年輪という話に偏りがちなんですが、家を建てるお客さんが興味を寄せるところが、現在においては木の履歴といったあたりが、入りやすいし分かりやすいのではないかと思いますね。

かつて木材の需要が多かった昭和の後半に、製材所は専門化が進んで、パーツごとの分業になりました。柱などの角材、板材、造作と、大きくはその三つに分かれています。住宅一戸前に使う材料は、原木の調達も、製造工程も非常に煩雑でコストアップになりますしね。

これを私どもはもう一度、住宅一戸前分の材料は自社でフルカバーできるようにしました。パーツでは、木材製品市場に出して売ることになり、ユーザーの、家を建てるお客さまの顔はまったく見えないわけです。自社の特色を出すために、山林からの一括生産管理をし、それをどう販売するかと考えたとき、やはり木材市場ではなく、工務店さんやユーザーさんに直接売っていこうということになりました。

こうすることで、お客さまと触れ合う機会も圧倒的に増えましたね。クレームがダイレクトに入るなど、大変な部分もありますが、そのクレームの内容は、木材が冷暖房の加減でちょっと縮んだとか、割れたけど大丈夫かといったようなことで、そういった、木を使うことで起きてくる不安を解消するという点でも、丁寧な説明をしていくことが大切だということを、改めて実感しています。


(有)平井製材所が所属しているのは・・・

(協)スーパーウッディシステム

(協)スーパーウッディシステム

「徳島の気候風土に適した家をつくりたい。」「体にやさしい木をふんだんに使って低価格な家をつくりたい。」

お客様のニーズをしっかりと受けとめて、これからも木の温もりに包まれた「本物の家」を提案してまいります。

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製材所:稲岡正司さん

ハウスG

木材センター

稲岡正司(いなおか・しょうじ)さん

profile

昭和24年生まれ。外材の製材所を経て、昭和50年から平成8年まで、徳島杉の銘木センターで杉の割り柱の販売を担当。市場で求められるものを調査・研究し、製材所と協力して手間をかけることで、立米15万円前後の価格が20万円に上がるほど品質を向上させ、当時の割り柱販売量のシェアを日本一にした。多いときには月に1万5千本の柱を出荷したという、「木を売るプロ」。趣味の囲碁は5段の腕前。インターネットで全国の人と対戦することもあるという。


窓口の広さで、お客さまのどんなニーズにもこたえます

ハウスG丸太の流通経路は、山林家から製材所に直に流れるか、木材市場を経由して製材所に流れるか、大きくその二つです。製材所の製品も、製材所から直接、材木店やプレカット店に流れる場合と、市場を経由する場合と、これも二種類。我々はその木材の市場なんですが、野菜市場や魚市場と同じように、木材に関するあらゆるものを扱っている。県産材だけでなく、他県のものも、外国材も扱っています。いわば仲介ですが、それだけでなく、小さな製材所の営業の代行的役割を担っております。

そうやってあらゆる木材を扱っている中で、徳島産の木材の特徴と言えば、他県より太い丸太、年数の経っているものが多いということですね。木自体も、他県のものと比べて品質もいい。以前はきちんと枝打ちをして、できるだけ節のないものをつくろうと、生産者も手間をかけてきましたから。そういう太さを活かして、徳島は割角の化粧用柱や板類のシェアが高いです。あるいは、胴縁(どうぶち)とか垂木(たるき)類、小割(こわり)類。足場板や加工板を作るメーカーも多いですね。

もう一点は色の美しさでしょうか。杉はヒノキや他の木に比べてピンク色なので、見た目がやわらかい、温かい感じがしますね。同じ白木でも、茶室などにヒノキを使うことはまずないです。化粧(木が見える状態)で使う場合、徳島杉のピンクはキレイで、壁とか柱には好まれます。

ハウスGまた、杉の赤身はシロアリにやられないんです。以前は当社も、杉の赤身を沖縄や南の離島にたくさん送ってました。鉄筋はシロアリにやられるけど、杉の赤身はやられないということで。湿度の高いところ、海に近い温かい地域、そういうところは杉を使うのが多いんですね。木は一度生えたら自分で場所を動けませんから、虫にやられないよう、人間に白血球があるように、木も自分を守ろうとする成分があって、それが赤身のところにあるんだろうと思うんですが、そういう木の力を、家を作るときに使わなければいけない。

最近のお施主さんは、TVで宣伝していてネームバリューのある大手のハウスメーカーにまず見学に行きます。そこで「柱は集成材が一番いいですよ」と説明されたりすると、木のことを知らない施主さんは、それを信じてしまうんですね。もちろん糊で貼り合わせた集成材にも長所はあって、曲がりにくい、狂いにくい。木造の家のクレームのほとんどは、木の生材(なまざい)を使うところに起因していて、乾燥してきたら動いたり、隙間ができたりゆがんだりする木も中にはあります。木の家を作る人のほとんどは、ムクの木を使うならある程度しょうがないと理解しているけれど、1000人に何人かはそれを知らずに、クレームになる。工業化された集成材にはそういう問題は起きない、でもそれだけむしろ欠点のほうが多いと思います。

集成材の問題は、ヨーロッパの寒い地域の木を使ってることが多いですから、日本の高温多湿の気候ではシロアリにやられやすい。また糊付けしているわけですから、糊のところで遮断されて、水分を吸収したり放出したりの移動がうまくいかない、そういうことを考えなければいけないわけです。

そういった、偏った情報に我々がどう対抗していくかというと、やっぱり木のよさ、健康面をきちんと訴えていかんとアカンのではないかと思いますね。そして、「いまはこれが一番いい」というものを100%信用してはいけないということ。スポーツの常識でもなんでもそうですが、いままでこれが良いと言ってたことが、わずか数年でコロっとかわることもあるわけです。“最新”を売りにしたデータは、5年先、10年先にどうなってるか分からない。また、いまは建築基準法改正で、換気扇を24時間つけるようになっていますが、本来から言えば、そんな家を作らなアカンこと自体が問題でしょう。それは、新建材や集成材からいろいろな化学物質が出て、健康面に問題があるから換気が必要なわけです。

子ども部屋や寝室など、いる時間が長い部屋や閉め切る頻度が高いところは、健康面を考えれば、杉材や板を見えるところに使って欲しいですね。そうした親の気配りが必要じゃないかと思います。私も30年以上前に家を建てたとき、当時は知識もなかったし、新建材で作ったんですが、新築の間は目が痛いとか、いまから思えば子どもにもアレルギー反応のようなものが出てました。自分で身をもって経験したから、見学に来られた人にはそういうことも説明しています。

また、乾いたら狂いが生じるという問題をクリアするためには、こちらもきちんと乾いた木を日ごろから用意しておく必要がありますね。ハウスGについても、むくの木の乾燥材を普段から持って、しかも年数の経った木をなるべく出していけるようにしています。「品質のことはともかく、値段の安いものを」‥‥という建築業者もいる。しかし我々のように木を売ってる者からすれば、やはり品質のいいものを使って、きちんとした家を作って欲しいというのが願いですね。

徳島県産材では、やっぱり杉を使ってほしいですね。湿度調整に優れている点、あるいは木本来の温かさ。同じ床板を踏んでも、ヒノキは冷たいですが、杉は温かいし、やわらかいです。押入れの中も、ベニヤ、合板で貼ってしまうより、杉なら十分湿気を取りますから、収納しているものを乾燥させられる。見えないところだから合板でもいいのでなく、そういう場所だからこそ、吸湿という機能を考えれば、やはり木がいいんです。

ハウスGでは一般の方向けに、定期的に勉強会を開催しています。建て方やいろんなことを勉強する中の一環として、ここへも見学に来られます。山からどういうふうに木を切ってきて、どんな商品ができるのか、板にしたり柱にしたり、和室では敷居はこんなもの、鴨居はこんなもの‥‥と、現物を見て説明するわけですね。そんな中で健康面のことも説明すると、喜んでくれますね。特に現場で、こういう木はこういうところがいいですと、見ながら説明されると分かりやすいと。我々もそういう機会に、ハウスメーカーとの違いをしっかり伝えていきたいと思います。

ハウスGの特徴は、製材所一社だけでなく数社の製材所を取り扱っており、自社物件に関しては、その中からいいものを選んで出していける。それと、県内一円、窓口が広いですから、どんなお客様のニーズにもこたえられます。お施主さんも、家を建てようと思ったときには、ハウスメーカーの住宅展示場に行く前に、まず木とのふれあいを持ち、木のことを知ってほしいですね。


稲岡さんが所属しているのは・・・

ハウスG住宅センター協同組合

ハウスG住宅センター協同組合

木材生産から、製品販売、建材・住設販売、住宅・宅地販売まで、実績のある各社が協力しあう一貫システムです。

→ハウスG住宅センター(協)サイトへ(外部サイト)

製材所:湊俊司さん

那賀川すぎ共販

 

那賀川すぎ共販協同組合

湊俊司(みなと・しゅんじ)さん

profile

1958年、阿南市生まれ。1979年『株式会社アルボレックス』入社、2000年 那賀川すぎ共販協同組合。『株式会社アルボレックス』で営業として、住宅部材、木材の販売に携わる。座右の銘は“有言実行”。曰く「意志が弱いので、言ってから動く様にしています」。5~6年前からマラソンにはまり、体質も変化し、風邪をひかないのでやめられないとのこと。


木の先進県・徳島から、品質と技術を発信していきます。

※宿泊体験もできるモデルハウスで伺いました。

那賀川すぎ共販このモデルハウスの特徴は、構造材がオール徳島県産材であるということです。壁を全部杉で建ててるし、断熱材も杉板です。いま一般的なグラスウールの断熱材は、確かに木材より格段に断熱効果が高い。ただ、それはきっちり施工できたときの話で、隙間があったり、湿気が入ったときの数値は非常にバラつきがあるんです。ここは、杉板を断熱材に入れたときにどういう効果が出るのかを体感していただく施設であると同時に、温湿度計で全部の部屋と外気温との差を記録し、データ分析する実験棟でもあるわけです。

一軒の家全体を杉で建てると、材料としては80立方メートル使いますが、原木で言うと200立方メートル超えるような量を使うので、山に対する還元率も大きいですよね。山の木を使うことが、林業の活性化にもなり、循環型の環境も保全できる。いま省エネ住宅にはエコポイントがつきますが、近い将来には木造建築に対しても、エコポイントがつくようになるんじゃないでしょうか。

那賀川すぎ共販那賀川すぎ共販杉は比重が軽いんですが、それは空気層が多いということで、木自体が保温性を持っていて、蓄熱作用があるんです。だから断熱材を入れてない割には温かく、一度温まったらなかなか冷めない。寒い日でもスリッパが要らないくらいです。また、木材自体の匂いがかなり長持ちしますので、芳香剤を入れなくても大丈夫。ここはキッチンも全部ヒノキで作りましたが、普通は扉を開けると内側は合板や新建材で、それがすごく匂いますよね。だからここでは、内側まで全部木材で作りました。お風呂やトイレなどの水周りにも、ほとんど木材を使ってますが、乾きが早く、消臭効果もあります。
この家は、シロアリ予防の防蟻処理もしてないんです。建築基準法では、木造は基礎から1mは防蟻処理しなきゃいけないんですが、杉やヒノキの赤味で施工した場合は必要ない。それほど強い材料なんです。防蟻処理に使うのは砒素ですから、そういう人体に有害なものは全部排除したんです。
金物も、できるだけ使わないようにしています。この柱とハリケタの接合部に打ってあるのが、込み栓です。釘代わり、認定金物なんです。筋交いも、柱と柱の間に断熱材代わりに木の板を入れることによって、要らなくなる。それに、木の家は燃えやすいと思われがちですが、実は燃えるのにはとても時間がかかる、1分1mmという燃えしろ設計です。いまの消防は到着に30分以上かかるということはないので、50mmの材木を使っていたら、十分消せるという計算です。

那賀川すぎ共販我々は製材業者ですから、材料の選別自体もこだわりますが、徳島杉の特徴であるピンク色、これを殺さない乾燥方法とか、その木が持つ品質をとにかく活かしきることにもこだわります。色を濁らせないよう、黒くさせないように、まず天日の自然乾燥で3~4ヶ月置いてから、人工乾燥機に入れる。それも、色を保護するために70度以上には上げないとか、そういう工夫をしています。
関西の良い丸太は徳島にかなり流通してますが、それは板材を商品化する加工技術が、全国的にも徳島がレベルが高いからなんです。温暖で晴天率も高く、乾燥に適した風土ということもありますし。全国版の建築雑誌にも、徳島の板材が、かなり紹介されています。

これは江戸時代の後期から200年以上、伝統的に職人技がずっと受け継がれてるんですね。丸太の中で、どこをどういう風に取るかという“木取り”の技術も高い。昔は“阿波の三分板”と言われた、住宅の外装材に使われる9ミリくらいの薄い杉板があるんですが、その薄さをまっすぐ狂いなく高速で引こうとしたら、ノコの技術も要るし、木取りの腕も要る。それは、徳島の伝統的な技術です。やっぱり京阪神という大きな市場があったから、外装材の供給のために技術が発達したんでしょうね。

那賀川すぎ共販そんな製材業者が、板を二次加工して、最終商品にまでするのが一般的にになったのは、ここ10年くらいです。でも県外にはまだ、こういう板倉の住宅をシステム化して、プレカットまでして現地では建てるだけになってるシステムが、まだあまり整ってない。そういう意味でも、徳島は先進的です。

こういう住宅を目指す方、特にこのモデルハウスを県外から見に来られるまでの方は、ものすごく勉強されてます。国産材で家を建てることの意義、環境面への配慮、家族の健康のことを考えて、いろいろ調べてると、行き着く先はこういうものになってくる。それまでの過程で、最近はネットでものすごく勉強されている。乾燥の方法はどうされてるんですか、とか、金具はどうされてるんですか、ホールダウン(基礎のコンクリートと木材の接続方法)は‥‥など、プロの領域まで踏み込んだような質問が出てきます。

そういう意味でも、我々自身が展示会に行って、工務店さんでは説明しきれないところをフォローして、木材の育て方とか製材の技術、乾燥の方法などを、施主さんにどんどん説明したほうが良いと思うんです。そういう方は、どこでどういうふうに作ってきたのか分からないものは、絶対使いたくない。出生、出所がきちっと分かって、作り手や工務店さんはこういうところだと、そういう履歴があるところに頼む。やっぱり2千万、3千万という一生の買い物なんで、いい加減なところでは妥協できないでしょう。そういうお客様に、良い商品と、安心感を提供していきたいですね。

 

那賀川すぎ共販
▲一軒の家には4~5種類の板を、合わせて1500枚くらい使う。『那賀川すぎ共販(協)』は常時15万枚、つまり100軒くらいの家の在庫を持っているとのこと。「千枚の注文が入ってから千枚作るのでは絶対間に合わないですからね。常時、乾燥材の在庫があって、注文が入ってから1週間程度でどこの組合員からも出せる体制というのが、このシステムの強みなんです」。


湊さんが所属しているのは・・・

那賀川すぎ共販(協)

那賀川すぎ共販(協)

私たちは天然の無垢板建材「セーフティボード」や「板倉造の住宅」などを通して、人と自然環境にやさしい快適な家づくりをご提案しています。

→那賀川すぎ共販(協)サイトへ(外部サイト)