(1)育てる人(林業家)

林業家:亀井廣吉さん、裕人さん

亀井林業

四代にわたる林業家。針葉樹と広葉樹の混植によって新しい山づくりを目指す試みが、県内外から注目されている。

TSウッドハウス

亀井廣吉(かめい・ひろきち)さん

profile

昭和24年生まれ。亀井林業の三代目。登山を趣味とし、

長野の北アルプスまで行くことも。木沢林業研究会会長も務める。

TSウッドハウス

亀井裕人(かめい・ひろひと)さん

profile

昭和52年生まれ。亀井林業の四代目。中京大学経営学部を卒業し、帰郷。徳島
マラソンに出場し、5時間30分で完走したことも。


※針葉樹と広葉樹が植えられた、亀井林業の山で伺いました。

 

山に、林業家がもっと入らなきゃ。

混植を始めて、山がますます面白くなりました

TSウッドハウス廣吉さん このあたりは通称「ヒノキだま」と呼んでいます。古い言葉で、山の中の平らになっているところを「だま」というんやけど、あの大きなヒノキは山の神様で、樹齢300年以上。昔はアワとかヒエを作る畑だったところです。最近間伐したところなんで、よう陽が当たっとるでしょ。この辺の木は、四代前に植えたところです。昔は車もないし、急な斜面も、背中に苗を背負って行って植えたんだろうね。山の上だったら歩いて2時間はかかる。50センチくらいの苗を人間が背負うて行くんやから、持って行ける数に限りもあるしねえ。ようこれだけ植えたもんと思います。

その辺の草木は、種が飛んできて勝手に生えるんやけど、スギ林の中に生える雑木は絶対に伐らんようにしとるんですよ。秋に葉を落として肥料になるし、乾燥も防ぐし、見た目にもキレイでしょ。森は草が生えてないとアカンのです。でも、いまは鹿にみなやられてしまうねえ。皮をむかれて枯れてしまう。

裕人さん この辺はサルもようけおりますよ。この前30匹くらいの大群がおって、それはちょっと怖かったねえ(笑)。

間伐はだいたい15年単位でやっています。木が太ったら間伐して、太ったら間伐して‥‥という繰り返しですね。スギは若いうちは上に伸びて、それが止まってからだんだん太りますから、15年では直径10センチにもならないくらいです。ある程度太さがなければ製品にはならんから、「搬出間伐」と言って製品にするのもあれば、「切捨て間伐」と言って山にそのまま置いておくのもある。切捨ての木は、斜面の石が転げ落ちんように押さえるとか、そういうふうに使ってます。

TSウッドハウスTSウッドハウスのこだわりの一つの「葉枯らし乾燥」は、枝葉を切らずにつけたままで乾燥させる天然乾燥です。木を伐った後、山の上のほうに頭を向けて寝かせておいたら、3~4ヶ月で乾燥する。昔は乾燥機がなかったから、頭を上にしておけば木の細胞が水を上に上げていく性質があって乾くのが速い、という先人の知恵です。いまは乾燥機が普及してますが、天然乾燥のほうが木の成分や長所がちゃんと残るので、TSでは葉枯らし乾燥にこだわってます。

廣吉さん 80年くらい育った木を伐ることを「長伐期」というんやけど、それは計画としてそうなったというより、結果としてそうなってきた感じやね。昔は直径20センチくらいの木でも、伐って下まで担いで行ったらその人の一日の賃金が払えてた。その頃は20年とか30年の「短伐期」で伐ろうと思うてたんでしょうね。いまは単価も下がって、幸か不幸か70年、80年の高齢木がようけ(たくさん)あるけん、それを伐っていっても枯渇はしませんね。でも売れるには適当な太さがあって、太すぎても売れにくい。それが難しいねえ。

裕人さん 80年かけて育てても、売れやすいのは直径36センチくらいまで。それ以上太くなったらいまは太さに見合う値段で売れづらい。昔は立派な構造材になっていたけど、いまは住宅の建築様式が変わってきて大径木の需要がすごく減りました。なので、安い値段でも、泣く泣く売る感じです。

そんな林業でも、よく跡継ぎになった、ですか? まあ最初から、ゆくゆくは家に帰ろうと思っていましたね。名古屋の大学で経営を勉強しましたが、将来のための人間関係ができるところがいいと思って、最初は市場に就職しました。そこで木材も見て、木取りの勉強にもなったけど、一番良かったのは人脈ができたこと、人の勉強ができたことやね。丸太の市場のあと、製品の市場でも仕事しました。そこでは製品の、「柱」とか「垂木」という名前が分かったし、どういう製品がどういう用途で使われるかが勉強になった。丸太の市場にいるだけでは、製品のことが全然分からないんですよ。丸太で使う単位は、「立米(りゅうべい)」とか「センチ」じゃないですか。製品市場の現場に行ったとたんに、「寸」やら、「分」ですからね。丸太から製材された後の製品のことが分かったのは、いまの仕事にも役に立っていると思います。

廣吉さん ウチは最近、スギだけを植えるのをやめて、ケヤキやヒメシャラ(サルスベリ)など、木材にするための広葉樹を一緒に植えよるんですよ。広葉樹ばっかり植えたところもある。スギはいまは価格が下がったし、根っこまでは売れんけど、ケヤキは神社の柱になったり、木工品にもなるし、根っこも売れるしね。3年前くらいから、スギとケヤキの混植を始めたんやけど、「ああ、もっと早くからやっといたらよかったなあ」と思てます。

ケヤキには間伐収入はないんですよ。しかも植えてから100年くらい経たんと売れない。だけど間に杉を植えておいたら、杉で間伐収入がある。将来はケヤキで収入になる。この方法が一番良かったんじゃないかと、最近になって気が付いた。自分にその収入が入るのには、ちょっと年齢が足らんけどね(笑)。

TSウッドハウスこんなことをしよるのは、全国でもウチくらいと違いますか。「森づくり」みたいな活動で、ボランティアの人たちがケヤキを植えることはあるけど、山で収入を得ようと思うてケヤキを植える人は少ないと思うね。このアイデアのきっかけは、20年くらい前に県南の海部(かいふ)のほうに行ったとき、全部がスギで、きれいに枝打ちしてある林を見て、「ああ~、この林には負けるなあ、なんぞ変わったことをしないとアカンなあ」と考えて、思いついたのが、ケヤキとスギの混植なんです。

いまでも他には誰もそんなことはせずに、山を人に任せて、昔からずっと一緒のことをしよる。時代に合わせて変えていったらいいのにな。広葉樹と針葉樹の混植をすると、やっぱり、山によく行くようになりますよ。剪定ばさみを持ってね。ケヤキは枝が必ず二股に出てくるんですよ。まっすぐに育てるためには、それを1本にしないといかんのでね。

裕人さん ケヤキはきれいだったら大黒柱、かまち、なんにでも使える。でも真っすぐでないと価値がないけんね。真っすぐでないものは、スギと値段はあまり変わりません。手入れしたら、伸びるんも速いような気がします。

廣吉さん ケヤキは枝打ちしたらそこから腐るけん、あんまり太い枝は打てない。だから密植して枝を出さんようにするんです。そこで、スギと密植しようと考えたわけです。ケヤキとスギを密植して、先にスギを間伐して、伐採して、最後はケヤキを伐るという順番で。

裕人さん 悩みの種は、そのスギを伐採したときに、枝を張ってるケヤキに絶対引っかかるから、倒すときに難しいんじゃないかと‥‥それをよけるのにどれくらいの密度かいいか、これも実験してみないと分からんのですけど。その実験も、親、子、孫と、時間がかかりますからね。

廣吉さん 最初にケヤキを植えたときは馬鹿にされたけどな。けど、100年後に何がどうなっとるか。外国からの需要も、「広葉樹でなければ」ってことになるかも知れんし、それを考えたら、いまは何の木でも植えとかなあかんと思うんよな。それに、スギばっかり植えよったら、林業家としてもホンマに面白くない。スギだけだったら、自分が現場に行かなくても、人に任せっぱなしでもみなできる。やっぱり自分で山に行ってこそ、山も良くなるし、広葉樹を植えておけば紅葉もしてキレイし、それで人が呼べて、良い循環ができると思うね。

TSウッドハウス裕人さん いまのままでは山に入る人がどんどん減って、山の境界も知ってる人がおらんようになると思うんです。じいさんは知ってるけど、孫は県外に出てしまって知らん、とかね。

廣吉さん 境界の目印も、ただの石だったりするからね。ガラスを割って土地の中に埋めよる人もおったなあ。「ガラスは絶対腐らんから」って。ほなけど、そのガラスをどうやって探すんや、と(笑)。

混植したら、山に行く機会は何倍にもなる。やっぱりウチも、持っている山が広いので、もう全然行かん山もあるんです。そういうところはどうしても手入れは遅れていってしまう。だからいまはだんだん、手入れする山と、ほうっておく山と、区別していっています。どれくらいの山を持っているか、全部を測量したことはないけど、かなりあるからね。人の土地と土地に挟まれていて車で行けない場所もあるし、全部で50カ所くらいあるから。

裕人さん 持っている山の広さは、だいたい500町だろうと思うんやけど、道をつけられるような山でないとなかなか行けないので、僕も全部はまだ行ったことないですね。(※ 1町=10反[9917.4平方m=約1ヘクタール]で、500町は東京ドーム約106個分)

(場所を移動して)このあたりに植えてるのは、カツラとケヤキ、ミズナラもあったかな? いまは1mおきくらいに植わってますけど、間引いていて、最終的には3mおきくらいにしますね。

TSウッドハウス廣吉さん この辺は全部、ボランティアの人が植えた木です。そういう活動に、ウチの山を提供しよる。徳島トヨペット、日亜化学、ロータリークラブ、植林ボランティア協会‥‥いろんな企業や団体が植林しに来るし、家族で植えに来る人もいますよ。植えたあと、ときどき見に来たり、下草刈りに来る団体もあります。

こっち側はクヌギとヤマザクラとケヤキやね。クヌギはしいたけの原木にもなります。あの先の大きなスギは“天然生え(てんねんばえ)”、つまりタネが飛んできて、勝手に生えたもの。やっぱり天然生えは強いな。そういうのは、鹿は食わんのよなあ。なんでか分からんけど、人が植えたものしか食わん。天然のはアクが強いのかも知れんね。生命力があるからなあ。

裕人さん 天然生えのスギの遺伝子を使って、強い品種とか何かできんのかなあ、と思ったりしますねえ。

廣吉さん この辺に植えとる木は、挿し木でなくて、全部“実生(みしょう)”、タネから育った苗を直接土に植えてます。実生の特徴は、うまく育てば強いけど、いいのも悪いのもいろいろ混ざってるんで、育ってみないと分からないというところがあるんやけどね。

広葉樹の苗はほとんど徳島県の苗木屋さんから買うけど、売ってないやつは関東のほうから買う場合もあるね。広葉樹の苗木って、庭木にするもの以外、苗木屋さんでもあんまり作ってないんよ。でも、ここでは面白い木を植えてみようと思うてな。いろんな木の実が成る、“鳥があつまる山”を作ってやろうと思うて。それには20何種類、要るんやけど。要は、スギばっかり植える前の、昔の森のようにするという実験です。

TSウッドハウス裕人さん いまは「協働の森づくり」というような、林業家だけじゃなくて、広く一般の人にも関心を持ってもらって、企業や団体、学校と連携して、ボランティアで植林する、という活動が広まってきているんです。だから植林できる場所があったら、「とくしま森とみどりの会」という団体に提供して、そこが企業や団体を募って、植林する。自分で植えたら、また山に来てくれるかも知れんしね。この前は高校の活動の一環で、高校生が80人くらいと、アサヒの社員さんが20人くらい来られましたね。

やっぱり、森に来て、現場を見てもらうのは大切だと思うんですよ。TSウッドハウスのこだわりで、「伐採ツアー」もあります。施主さんや建築士の方が、県外からも参加されますよ。施主さんが「この木を柱に欲しい」と選んで予約していったりね。そういうこだわりのある方が参加してます。木はこういうところに生えてるんだとか、切り倒すときの迫力とか、そういうのを体感して欲しいです。そこまでした人は、家を大切にしてくれると思うし。

廣吉さん 体験の中で、自分で伐ってもらうけんね。

裕人さん そういうツアーは10年以上やってるけど、大きい木を切り倒すのは、ドーン!と地響きがして迫力があるし、みなさんびっくりしますね。楽しかったのか、もう家を建てた人でも、何回も来たりします。そこで同窓会みたいになってたり(笑)。

ツアーで来てもらうだけでなく、自分たちのほうから完成見学会に行くこともありますよ。ウチから出した木で、特注だったら覚えてますから、ああ、こういうふうに使われたんだな、とか。人形浄瑠璃をやってる十郎兵衛屋敷も、あそこの太い木は全部ウチから行っています。ツアーの中の見学ルートに組み込まれたりしているんで、みなさんに見てもらいたいですね。そうやって、いろんな現場を見て、体験して、山や木に興味を持つ人が増えてくれるといいと思っています。


亀井さんが所属しているのは・・・

TSウッドハウス(協)

TSウッドハウス(協)

良質の徳島すぎを構造材として使用したTSウッドハウスの家。山と木を愛する専業林家の視点から日本の住宅を見つめます。

建築家、製材会社、大工のネットワークを使った家づくりを進めています。

→TSウッドハウス(協)サイトへ(外部サイト)

林業家:徳永惠一さん

もくさん

株式会社もくさん

徳永惠一(とくなが・えいち)さん

profile

昭和13年に生まれて以来、勝浦郡上勝町に現在も住む。昭和46年7月、上勝町森林組合に勤務。平成14年に広域合併により徳島中央森林組合となり、平成15年の 65才定年退職後、嘱託員として『株式会社もくさん』と兼務で勤務している。森林組合正職時代、木造住宅(日本建築)の木材供給を20棟あまり行った。


※“葉っぱ事業”で有名な上勝町の事務所に伺いました。

もくさん

木を使うというのは、その“力”を使うということです。

林業をする人間は、どういう土地にどんな品種を植えたらいいか、当たり前に知っています。なんでも南向きがいいというわけでもなくて、松やヒノキは、南向きで赤土のところが良い。

杉は、北向きで黒い土が良いんです。実際に昔の人が植えて育てて、それだけでなく、使ってみての経験から言われていることですからね。材木として使えるのは植えて50~60年経ってから。じいさんやひいじいさんが植えてくれた木を自分が切る、それくらい気の長い仕事です。

仕事の内容は、植林から始まって、下刈り、枝打ち‥‥中でも下刈りが一番辛い仕事ですね。杉やヒノキの苗は成長が遅いから、一年草の雑草に背丈を抜かれてしまって日が当たらない。

それを草を刈って、出してやる作業です。雑草が伸びる梅雨時期から7、8月頃までの作業だから、蜂はおるし、マムシはおるし、大変です。これを10年、15年くらいはしますね。

もくさん15年目くらいからは枝打ちをして、20年がきたら間引きをする。20年経っても、太さは直径10cmとか15cm程度ですから、ほとんどお金にならない。それから枝打ちして、5年くらい経ったらまた間引き。この間引きのときに、間伐材が少しお金になる。だから、植林してから25年間は、ホントにお金にならない、悪い木を間引いて、きれいなのを残すだけの作業です。

ちなみに杉は種からできます。花粉が飛んで、交配して種になる。木には、その種から育てた苗を植林する“実生(みしょう)”と、“挿し木”という二つの方法があります。挿し木は、種の素性、系統がはっきり分かっているから、品質が安定している。ただし、自分で土に根を下ろしてないから弱い。台風が来たとき、全部倒れてしまったりします。実生は、どこから花粉が飛んでくるか分からないので、育ってみないと品質が分からないところもあるけど、自分で深く根を下ろすので、“芯持ち”と言って、強い木になります。このあたりでは、斜面が多いこともあって、実生の苗を植えることが多いですね。

杉やヒノキは、しっかり植えさえすれば、基本的には真っすぐに伸びるんです。ただし上勝みたいに急傾斜の山は、木がどうしても前に倒れるのを、自然に起きようとする。人間も斜面に立ったとき、落ちないように足を踏ん張るでしょう。そういう力が働いて、一本の木でも、斜面の下側、前側のほうが強くなる。それで、木に“アテ”と“ミ”という性質の部分ができて、製品にしたときに、“おこったり、いばったり(曲がったり割れたり)”するんです。また、南向きだとそこに日が当たって、前側のほうが後ろ側より太ってきて、年輪の中心がずれてくる。

もくさんこういう木を製品にするとき、その個性をよく見て板に引かないと、製品になってから狂ってしまう。いまは“木取り”をできる人が少なくなったから、建ててから木が曲がったりして、クレームが出るケースもありますが、ベテランなら、その木がどんな育ち方をしたか、見ればわかる。それをわかって製品にできたら、木の値打ち、強さがしっかり出てくるんです。

奈良の法隆寺の五重の塔なんか、曲がった木を使ってる。この木はこちら側が強いから、こういう方向に力が加わってもたわまないと、そこまで木の性質を読んでるんですね。木を使うということは、自然に大きくなった、その力を使うということです。木は切ってからも、腐るまで、育った性質を持っている。それを十分活かして使ってやれたらいいですね。

昔は製材業者さんが山まで来て、自分で木を見て、選んで切って持って行ったけど、いまは苗木を作る人、植林する人、枝打ちする人、間伐する人、切り出す人、製材する人‥‥と分業が進んで、全部が分かってる人は少なくなりました。

でもこれだけ手間と年月をかけて育つ木ですから、木を作る側も、製材する人も、設計する人も、そして住む人も、その良さ、性質を分かった上で使ってくれたら良いですよね。そうしたら木の値打ちが出てくる。

「こういう木をこういう風に使っているからこんな力にも耐える」と、人にも説明できて、自慢できる家になる。そんな風に、楽しみながら住んでもらいたいと思います。


徳永さんが所属しているのは・・・

もくさん


(株)もくさん


徳島県上勝町の豊かな森林資源を守りながら、地域の活性化を推進する第3セクター方式による株式会社です。


「地球環境の保全」をテーマに、森林の管理・育成から、 住宅の設計・施工までを総合的に取り組んでいます。


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